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血管腫・血管奇形 hemangiomas

血管腫・血管奇形とは

血管腫・血管奇形IVR外来

毎週火曜日に血管腫・血管奇形IVR外来(責任者・担当医三村秀文)を設けています。本外来は血管奇形特に静脈奇形、動静脈奇形のIVR(硬化療法・塞栓術)を対象とした外来です。血管奇形は稀な疾患で、血管腫と呼ばれることが多く、頻度の多い乳児血管腫と混同されることが稀ではありません。血管奇形の治療を専門とする医師は少なく、患者さんは治療医を求めて多くの病院を受診され、困っておられる方が多いといわれています。血管腫・血管奇形の疾患概念、血管奇形の血管内治療についてご説明します。

静脈奇形とは

静脈奇形は胎生期における脈管形成の異常で、静脈類似の血管腔が皮下や筋肉内などに増生する低流速の血流を有する病変であり、形成不全をきたした拡張した静脈腔で構成されます。全身のどの部位・臓器にも発生し、周囲組織の圧迫あるいは血栓形成による疼痛、腫脹、機能障害、出血などを主訴とし、美容上の問題も課題になります。先天性病変であることから発症は出生時から認めることが多いですが、成人期での症状初発も稀ではありません。症状、増大傾向がなければ経過観察あるいは保存的治療(弾性ストッキング、消炎鎮痛薬、抗血栓薬)、症状があれば積極的治療を考慮します。

当院における静脈奇形硬化療法

当院では主にポリドカノールフォームを用いた硬化療法を施行しています。フォームは硬化剤とガスを混和して作成します。ポリドカノールは推奨用量内であれば最も安全な硬化剤と考えられ、またフォームを作成する際にも血液に吸収されやすい二酸化炭素を使用することにより、安全性に配慮しています。我々の経験では、疼痛を主訴とする約9割の患者さんに疼痛軽減効果があります。手技による合併症として皮膚壊死、水疱、神経障害、筋拘縮、血栓性静脈炎、深部静脈血栓症/肺塞栓症が報告されており、また硬化剤に特徴的な合併症もあります。治療は一般に外来で(入院せずに)行います。

 

静脈奇形の硬化療法
治療法
治療は血管造影室で施行します。経静脈的に鎮痛剤・鎮静剤を使用します。超音波で病変を観察し、点滴で使用する細い針で穿刺し、エックス線で観察しながら造影剤を注入し病変内に針先があることを確認して、硬化剤を注入します(図1, 2)。
通常数カ所を穿刺して硬化剤を注入します。治療時間は2時間前後です。

 

術後の安静
治療後は3時間程度安静にしていただきます。

 

術後の経過
治療後は痛み、腫れが出現することが多く、通常数日で改善します。皮膚は赤~茶色に変色することがありますが徐々に薄くなります。治療効果は1~3か月後に判定します。治療効果が不十分であれば再度治療をします。

 

 

動静脈奇形とは

動静脈奇形は、動脈と静脈が正常の毛細血管床を介さずに異常な交通を生じた先天性の病変です。静脈奇形同様、全身のどの部位・臓器にも発生し、疼痛、腫脹、潰瘍、出血、感染、機能障害などを症状とし、病気が進めば心不全となる可能性があります。発症時期は様々で、乳幼児期から顕在化する例もあれば、思春期以降や成人後に発症する例もあります。治療としては、保存的治療(弾性ストッキングなど)、塞栓術、切除術などがありますが、治療方針は施設により異なります。

当院における動静脈奇形塞栓術

動静脈奇形の塞栓術は静脈奇形の硬化療法と比較して難しく、複雑な治療となることが稀ではありません。通常前もって血管造影を施行し、動静脈奇形の形態により、オーダーメイドの治療計画を立てます。手術と組み合わせて治療することもあります。当院では経動脈的、直接穿刺、経静脈的アプローチを組み合わせた塞栓術を施行しています。主にNBCA、エタノール、ポリドカノールフォーム、コイルなどを組み合わせて使用しています。塞栓術は通常数日の入院で行います。

 

動静脈奇形の塞栓術(直接穿刺)
治療法
治療は血管造影室で、全身麻酔あるいは局所麻酔で施行します。経動脈的アプローチの場合は脚の付け根の動脈(大腿動脈)から細いカテーテル(管)を挿入して行います。直接穿刺の場合は硬化療法と同様の方法で行います。特殊な症例では静脈からカテーテルを挿入して治療する場合もあります。これらを同時に行う場合もありますし、別々に行う場合もあります。

 

術後の経過
治療後痛み、腫れが出現することが多く、通常数日で改善します。静脈奇形の硬化療法と比較して、塞栓術では虚血による壊死、潰瘍、感染などの合併症が生じやすいと考えられます。治療効果は1~3か月後に判定します。治療効果が不十分であれば再度治療をします。年齢、病変部位、サイズ、塞栓方法により、治療効果、合併症は様々ですので、これらについては治療前に詳しくご説明します。

指定難病について

平成26~28年度厚生労働省難病研究班「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班で研究代表者を務め、研究班では診療ガイドライン策定、指定難病の診断基準・重症度分類策定、疾患に関する情報提供を行っていました。
2015年7月より、新規の指定難病(第二次実施分)の医療費助成が開始されました。研究班の研究対象疾患は巨大静脈奇形(頚部口腔咽頭びまん性病変)、巨大動静脈奇形(頚部顔面又は四肢病変)、巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)、リンパ管腫症/ゴーハム病、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群です。外来受診時に指定難病認定に関するご相談をお受け致します。

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